16 自分に心の傷を負わせた人、親に、自分の実情をそのまま伝える
このステップは、クライエントの状況を感じ取って慎重に行う必要があります。
たとえば、カウンセリングが進むと怒りの感情が止まらなくなるケースが多く、親の前にいるだけでつらくなったり、親と会うだけでことばがきつくなったりするのが普通です。親と会わないのに、考えただけで、身体反応が出てしまうこともあります。
宗教二世、教会二世は、そのような辛い状況でも、親を寛容に受け入れることができない自分を責めたりします。自分を責めないように、自分に「いいね」を出し、「つらかったね」と自分を労ることを勧めます。
このような感情反応・身体反応は普通のことです。決して無理をしてはいけません。ある程度の余裕が出てきたらでかまいません。
もう一つ大切な点があります。親がそれを受け止められるかです。
ここで残念な報告をしなければなりません。親が、子どもが悩み抜いて、ものすごいエネルギーを使って決断し、話しに行った気持ちを受け止めることができるケースは、今までの臨床経験から言うと限定的です。
いくつかの反応があります。
(1)聞いているのか聞いていないのかわからないような、蛙が水を被ったような反応をする
(2)「育ててあげたのに」と逆ギレする
(3)「恩知らず」と子どもを攻撃する
(4)取り乱してただ泣くだけ
「親には従うのが標準だ」など、そこで宗教が持ち出されることもあります。実際、親もどうしたらよいかわからないという感じです。こういった反応は普通の自己防衛反応であり、親を一方的に責めることはできません。ただし、クライエントが勇気を出して言いに行ったことで、かえって心の傷を負うこともあるので、注意が必要です。
親が高齢である場合は、さらに注意が必要です。苦しめるだけで終わってしまう場合もあります。苦労して子どもを育てた人生の精算を迫ることになってしまうので、言われる側は辛いだろうと思います。受け入れてくれる可能性が低いときには、無理する必要はありません。
ただ一つだけ、かりに受け入れてくれなくても、言いに行った行為そのもの、言いに行く決断ができたことが心を軽くしてくれることもあります。
17 自分に心の傷を負わせた人、親の人生ノートを書く
これは最終段階です。親の人生のリビューをします。カウンセリングが進むとかなり客観的に親や団体のことが見えてきているはずです。これも無理する必要はありません。知っている情報だけで十分です。
やってみると、親がなぜあのような行動を取ったのかが見えてくるケースがあります。実は親も被害者だったことに気づくケースもあります。
18 自分のトリセツを作る
カウンセリングを受ける前は、理由がわからない生きにくさを感じ、カウンセリングを始めたところ、感情機能がいのちを吹き返し、悲しみ、不条理感、怒りなどいろいろな感情が喚起されました。また、尊重されてこなかったことに怒りのスイッチが入るなど、自分の感情に振り回されてきました。感情が喚起されると身体症状が出て、自分の意志でコントロールできなくなることに悩まされてきました。
どのような刺激があるとどのような反応をするかは、本人の中ではバラバラです。そのバラバラな情報をまとめることでかなり不安は軽減されます。
カウンセリングが進み、落ち着いてきた段階で、「自分トリセツ」を作ることを提案します。どのようなときにどのような感情反応が出るか。どのような人に会うとどのような感情が喚起されるか、どのような状況になるとどのような身体症状が出るかなど、それまで経験してきたことをまとめます。
この「自分トリセツ」は、気づいたことがあったら書き込み、バージョンアップして行きます。
カウンセリングのプロセスを、順を追って説明してきました。このプロセスは、順番に経験するわけではありません。不要な項目もあります。途中で止まることもあります。一歩進んで二歩後退するように見えることもあります。それで大丈夫です。
続く

コメント