宗教二世、教会二世 解決の鍵を握っているのは親の側

宗教二世/教会二世

この項目のタイトルを見ておかしいとお感じでしょうか。

親子の問題が表面化するとき、親と子のどちらにも問題がある、両方の意見を聞くべきだというコメントが出ます。親だけでなく子どもにも責任を取らせなければ、親子問題は解決しないのではないかという見方もあります。

子どもの側にどのような不条理であっても受け入れる人徳があれば、親子関係はうまく行くのではないかという見方もあるでしょう。しかしこれは、非現実的です。一パーセントの可能性があったとしても、その場合も、子どもは親に愛されることを諦める以外にありません。

子どもにも責任があるという考え方は間違いです。現実が見えていません。問題解決を遅らせるだけです。場合によっては、ますますこじらせる結果になります。

そもそも子どもの側は、産んでほしいとお願いしていません。これが「圧倒的アンフェアの力関係」です(12月16日投稿)。

たしかに子どもに問題があるケースもないわけではありません。たとえば、子どもが社会的に逸脱した行動をとって親を困らせているケースなどです。

しかしほとんどの場合、その現象は子どもが作り出したものであるよりは、親の側に何かがあって生じているのです。親が害になるようなことをしなければ、子どもは親が好きなのです。親に喜んでほしいのです。

子どもが日常的に親を虐待し続けるケースもあります。高齢者虐待は社会問題です。しかし、子育てのプロセスで何もない家族で、子どもが大人になったときに親を虐待する可能性はほぼありません。人間の心はシンプルかつ正直で、やられたことをやり返しているだけです。子どものことを尊重し、子どもを愛し、子どもの自立を後押しした親は、子どもから感謝されます。

親が自分の人生の振り返りをすると解決

親子関係がギクシャクするときには、どのようなケアが必要になるでしょうか。親自身が自分の親との関係を振り返るのが基本です。すでに他界しているケースもありますが、それでも振り返りはできます。

ただ、問題もあります。年齢が進んだ段階でそれができるかです。八十代、九十代になって子どもから責められる親は気の毒です。メンタル崩壊を起こして廃人のようになってしまう可能性もあります。受け止められるかについての見極めが必要です。

ただその場合も、子どもが悪かったという結論にだけは行ってはなりません。かわいそうになって、親からやられたことをなかったことにしてしまうのですが、それをやると元の木阿弥です。親から受けた心の傷は、永遠に癒やされないことになります。

問題解決の鍵を握っているのは親です。臨床的なイメージでは、親が「圧倒的アンフェアの力関係」を理解し、子どものあり方を認めるだけで、親子問題のほとんどは自然に解決します。なにもたいそうなことではありません。

「あなたはあなたでいい。応援しているから」

子どもはこのことばを聞くだけで十分なのです。それ以上聞く必要はないのです。この一言で涙を流します。ただ、この一声が聞けないので、子どもは心の傷をいやすことができないのです。

親からの虐待が酷かった場合は、親に復讐したいと思うかもしれません。親を殺したいと思うかもしれません。その場合は、非合法的な復讐のやり方にならないようなサポートが必要です。

臨床的なイメージですが、「あなたはあなたでいい。応援しているから」の一言を聞いた子どもは、極端な場合を除いて、落ち着いて行きます。その後しばらく、カウンセリングや自己ケアが必要になりますが、それでも落ち着いて行きます。そうすると、親子の間で心の交流が始まります。年齢が進んだ親を大切にし始めます。親の苦労をねぎらい始めます。

このような時期を過ごすことができる親は幸せではありませんか。こういう親になりたいと思いませんか。

続く

河村従彦

臨床心理士/牧師
カワムラカウンセリングルーム運営
KCPSコンソーシアム(牧会・心理職研修会)主宰
牧師人材育成、大学非常勤講師、ボランティアカウンセラー養成、出版、児童発達支援、職員コンサルにも従事、企業の総務にも関わる
東京、神奈川、静岡で教会を牧会
臨床心理学とキリスト教の両方に関わる領域に関心
「神イメージ理論」はライフワーク 博士(人間科学)
若い頃のアイデンティティ崩壊、人生後半にメンタルバランスを崩した経験から、人のお役に立ちたいと願って臨床を続けている

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