おはようございます。臨床心理士/牧師の河村です。
気分障害のカウンセリングは、認知行動療法などを用いて心理面にフォーカスしますが、それを支えて行く生活面・体調面の調整が欠かせません。
うつ病は脳内物質の不調なので、重度の場合はクリニックを受診し、抗うつ薬を使って脳内バランスを回復することもあります。実際、症状が重いときに抗うつ薬はよく効くと言われます。
その上で、医療と並行してカウンセリングを受ける場合、あるいは医療の必要がない軽度の方がカウンセリングを受ける場合は、体調面の調整にも注意しながら心理面にフォーカスして行きます。心理臨床ですから、治療(cure)ではなくケア(care)です。指導ではなく傾聴・共感が基本です。
認知行動療法で用いられるコラム法という方法があります。何かあると、自分の意志と無関係にネガティブな思いが出てきます。それを「自動思考」といいます。自動思考は認知の歪みから来ています。その認知の歪みを知り、柔軟な考え方をいっしょに探って行きます。
例を挙げておきます(『うつ 誰もがなりうるとても身近な心の病 適応障害・双極性障害 心の名医7人が教える最高の治し方大全』、文響社)。

このような表を用いながら自動思考を見直します。具体的には、次の3つのことを考えます。
1 ネガティブに考えてしまう根拠は何か
2 本当に困ったことが起きるか
3 もう少しよい別の考え方はないか
コラム法はうつ病の治療やケアで用いられるだけでなく、回復したあとも再発を予防するために使うことができます。
忘れもしないあの晩、突然心身の違和感を感じました。すぐにストレッサー刺激を軽減し、生活・体調面の調整については、できることは何でもやりました。
心理面の自己ケアは、コラム法のようにフォーマットにしたがって自分の認知を修正したわけではありません。しかしふり返ってみると、自分の身に起きたことが何だったのか、その背後にどのような人生観があったか。また、どのような認知があったか。そして何よりも、これからどのように生きて行けばよいか。仕事量を減らしながら、少し時間の余裕がある中でさんざん考えました。
いつも急かされていました。休んでいても頭の中は休んでいません。どうしたら効率的に次の仕事ができるかを考えていました。それまでの数年間に自分の身に起きたことについて怒りを蓄積させていました。
スパッと整理ができたなどとはとても言えません。しかし、突っ走る人生観はダメなのだということはよくわかりました。
もうこれ以上我慢しないほうがいいと脳が判断したとき、脳は全身に「止まれ」と指令を出します。これがうつ病です。「ここで少し立ち止まって、考え方を調整したほうがいい」と教えてくれるうつは、ある意味ありがたいとも言えます。考えるための機会を提供してくれます。
ここまでお読みいただいてありがとうございました。
きょうもよい一日でありますように。
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